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社会

令和5年度 社会科教科論

「自分軸」をもち,よりよい社会をそうぞうする子ども
ー「自分軸」の背景を明らかにした価値判断を通してー

 V U C A(変動性,不確実性,複雑性,曖昧性)時代と言われる現在において,予測困難な社会の変化にも対応するための主体性や協働性、創造性を育むことでどのようにすれば社会や人生をよりよいものにできるのか,よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けることを目指し、研究を進めてきた。具体的には,よりよい社会と幸福な人生の創り手として「利便性」「快適性」「安全性・安心性」「エンターテインメント性」「持続可能性」「ユニバーサルデザイン」等どの軸を大切にしたいのか「自分軸」をもち,人々が豊かに生きていくための社会の在り方について考えてきた。

 <対話する姿の例>

A:大きな交差点だと渡りきれずに事故が起こりそう,信号を長くすればいいのでは。

B:でもそうすると,赤のままの信号は長くなってしまって,急いでいる時に困る

C:どんな状況でも助かる案がいいね。地下道にすればいいのでは。

D:確かに地下道にしたら信号の長さに関わらず便利だ。

C:でもお年寄りは階段を上ったり下ったりは大変だ。

E:じゃあ,地下道にエレベーターをつけよう。

 このような対話において,Bの「自分軸」は「快適性」で Cは「ユニバーサルデザイン」,Dは「利便性」だということがわかる。「自分軸」を意識させて対話することで,その状況でどの軸が適しているか,複数の軸を実現させるためにどうすればよいかなどを考えられるようにしてきた。

 交流する際は I C T 機器やホワイトボード,ワークシート,思考ツール,板書等を工夫して,自分軸」を可視化した上で交流を行うようにした。また、指導者が対話をコーディネートするなどして,他者の「自分軸」にも目を向けたり、両方の考えの折衷案をつくったり,価値判断・意思決定したりすることで,よりよい社会とはどのようなものなのか,考えを深化できるようにしていく。

 

 昨年度までの成果として社会科の学習が始まったばかりの3年生では,単元内容を学習する中でよりよい社会を構成するためのさまざまな軸があることを知り,学年があがるごとにそれらの軸がどの社会的事象においても適応することを認識していった。「自分軸」を可視化することに重点をおき,「自分軸」を明確にした対話を通して,自他の価値観が伝わることによる多面的・多角的な見方・考え方を育てることができた。

 さて,昨年度,児童が対話の中で「ユニバーサルデザイン」を「自分軸」として主張する中で,その理由として「みんなが平等になることが重要だと思ったから。」と語った姿から,「自分軸」の背景を加えて自分の思いや考えを表出することによって,より自分の価値観や考えの根拠を自己認識できるのではないかと考えた。例えば<対話する姿の例>の   の部分が自分軸の背景として挙げられる。

<対話する姿の例>

A:大きな交差点だと渡りきれずに事故が起こりそう,信号を長くすればいいのでは。

B:でもそうすると,赤のままの信号は長くなってしまって,急いでいる時に困る

C:どんな状況でも助かる案がいいね。地下道にすればいいのでは。

D:確かに地下道にしたら信号の長さに関わらず便利だ。

C:でもお年寄りは階段を上ったり下ったりは大変だ。

B:じゃあ,地下道にエレベーターをつけよう。

 Cのように、誰かにとっては快適でも誰かにとっては困ってしまう状況は不十分であり,その意味では「平等」でありたいという価値観が背景として考えられる。このような,「平和」「平等・公平」「進化・発展」「利益」など,子ども一人ひとりがどのようなものを望み,どのような価値観で「自分軸」をもっているのか,自分自身を見つめるとともに,他者の大切にするものを分かり合うことを今年度は目指す。そうすることで,社会科が目指す「国際的、平和的、民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力」が育まれ,よりよい社会と幸福な人生の創り手としての価値判断にもつながると考える。

  • 社会科における,学びが生きる文脈とは

 子どもたちには,自ら問いを立てて探究し,他者と協働しながらよりよい人生を切り拓いていく力が求められる。その力を引き出せるよう,子どもを主語とした探究的な学びを展開することが求められ,それは未来そうぞう科における探究サイクル並びに社会科が長年大切にしてきた問題解決学習が担う役割は大きい。また,未来そうぞう科の「探究に向かう力」としての「社会や集団の一員として,社会や集団がよりよくなるよう考え,行動していく責任があることを自覚すること」は,社会科が目指す「自分軸をもつ」「自分軸を明確にする」「自分軸に自信や誇りが芽生え自分軸をより自覚する」「自分軸が広がる」等と一致するものである。そうした意味からも,今年度の「自分軸」の背景を明らかにした価値判断をともなう話し合いの役割は大きいと考える。未来そうぞう科と両輪で,これからの社会を担う形成者として,社会的事象の意義や価値を考え,それを受け継ぐとともによりよい社会を目指すことが社会科における学びが生きる文脈であると考える。

 

  •  社会科の学びが生きるカリキュラムマネジメント

 未来そうぞう科と社会科の資質能力との関わりは深く,共に実社会で生きる力となる。両教科の目指すものとなる,よりよい社会の担い手創り手としての価値観は,社会科の学びの文脈でも前述した,多様な考えを知り多様な考えを受け入れて本当にそれが最良なのかを熟考すること、そして未来そうぞう科において行動や活動,実生活・実社会への働きかけをしたときの成果及び矛盾や不十分を価値付けて新たな問いに向かう中で醸成されていくものである。

 では,未来そうぞう科と社会科のカリキュラムマネジメントとはどのようなものなのか。例えば教科書配列はこれまでの研究によって意図されたものであり,学びの効力が発揮されるものである。しかし,カリキュラムマネジメントにあたって,まず学習内容ではなく資質能力の関連性を分析していくようにする。

 

 例えば5年生の社会科においては「国土の地理的環境の特色」「産業」「情報」「国民生活」というキーワードのもと,「課題把握」「選択判断」「説明」「議論」を行い「多角的に思考し問題解決しようとする態度」「多角的に思考しよりよい社会を考え社会生活に生かそうとする態度」を養うことで「国への愛情や発展を願う気持ち,将来を担う国民としての自覚」を目指す。未来そうぞう科において扱った場合,自然災害が起きるのは国土の地理的環境が大きく関わっており(理科との関連も後述),国民生活(自分たちの生活並びに産業への影響や,いかに迅速且つ正確な情報が必要となるか)についても学ぶことになる。未来そうぞう科において焦点化した領域で学んでいくことで、子どもの探究サイクルが作用し,より実社会に結びついた学びとなることを目指すものである。

 

 また,未来そうぞう科のみならず他教科とのつながりをうまく組み合わせることで,社会科のみならず様々な教科から資質能力を育んでいくことができる。例えば家庭科における「自分」を知ること,「地域コミュニティの一員としての自分」について考えたり認識したりする学習は,社会における自分の立場やよりよい社会のために自分ができることを考える際に土台となるものであり,自分の周りの環境に目をやることで自分が様々な集団の一員であることに気付くものである。そうした一員としての自覚や家族や学級,学校,地域コミュニティ、習い事のコミュニティ等といった集団に属する中での生活経験は,「自分軸」の背景である価値観の土台となり,よりよい社会と幸福な人生の創り手となるための大切な力である。理科においては,自然観や科学観と社会科における自然観や科学観は関連があり,理科的な見方と社会的な見方の両輪で同時期に学習することで,より深い学びとなると考える。また,グラフ資料等による統計的な読み取りには算数科の担う役割が大きくなる。算数科におけるグラフ等で変化を読み取る力は,社会科におけるグラフ等の統計資料を通して社会の変化を読み取り分析することや考察することと関連が深い。さらに国語科においては,よりよい社会について対話する上で国語科の聞くこと話すこと、表現することが土台となり,道徳科で獲得した多様な価値は生活経験となり「自分軸」並びに自分軸の背景を根拠にした価値判断に生かされるものである。

 

 そして,このような社会科にとらわれすぎない,社会科の学びと未来そうぞう科をはじめとした他教科とのつながりを意識した授業において,育まれた「自分軸」は子どもの価値観の土台となって必要なものとなる。

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